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iPhone修理
修理屋の視点から見える、スマホと人とのつながり
- 渋谷店 2019-02-24 2025-03-12 スマホ修理ジャパン代表 中嶋拓也

スマホの数だけ物語がある – 修理屋の視点から
渋谷の片隅でスマホ修理をしていると、日々さまざまなお客様と出会います。
本日も開店直後から修理や相談をいただきながら、せかせかと動き回る一日。スマホというものがどれほど生活に深く溶け込んでいるのか、日々実感しています。よく「人の数だけ物語がある」と言いますが、現代では「スマホの数だけ物語がある」と言い換えることができるかもしれません。

当店は修理店なので、当然ながら壊れたiPhoneを直すのが主な仕事です。しかし、修理の過程でお客様と話していると、そのスマホに込められた思いや背景にふと触れることがあります。精密機器の修理とはいえ、これはやはり「人」と関わる仕事なのだと感じる瞬間です。

たとえば、旅行中にスマホを落としてしまった話。プールで水没させてしまった話。あるいは、大切な人から譲り受けたスマホの話。そんな何気ないエピソードのひとつひとつが、お客様の人生の一部であり、その思い出を修理するような感覚になることがあります。
夏の終わり、二人の学生さんの話
特に印象的だったのは、夏の終わりに訪れた二人の学生さんのエピソードです。
その日は8月も終わりに近づき、セミの声も遠のいた夜でした。外は暗くなり始めていましたが、当店にはまだ修理を求めるお客様が来店していました。その中に、ひときわ仲睦まじい若い二人組の学生さんがいました。
「プールで水没させてしまって、電源が入らないんです。」

彼らの話によると、雑貨店などで売られている簡易防水パックにスマホを入れてプールに持ち込んだものの、気づけば水が侵入していたとのこと。こうした簡易的な防水ケースは、あくまで弱めのシャワーや雨には耐えられるものの、水に完全に浸かると耐久性が不十分なのです。
端末を開いてみると、案の定、水はすでに内部に広がっていました。水没修理には時間がかかるため、通常ならお預かりとなるケースでしたが、彼らは「今日中にどうにかできませんか?」と頼んできました。
時間はすでに夜7時過ぎ。当店の閉店時間は20時です。
「できる限りのことはやります。」
青春のひとときと修理作業
ただ、もう一つの問題がありました。
夜の渋谷。大人の目線から見ると、若い二人をこの時間に外に放り出すのはあまりに心配でした。「大丈夫です」と言われましたが、一人の大人として、放っておくわけにはいきません。
そこで、受付で待ってもらうことにしました。
当店の受付には椅子が一脚しかありません。どうしたものかと思っていると、二人は「はんぶんこで座ります」と微笑みながら言いました。その姿に思わず胸が熱くなり、気合を入れて修理に取り掛かりました。
心の中で「うおおおおおおお」と叫びながら、できる限り迅速に作業を進めました。

水没修理は慎重に行わなければなりません。水が入り込んだ基板をクリーニングし、バッテリーと液晶の交換を行い、慎重に動作チェックを進めます。通常2時間ほどかかる作業を、最速で進めながら、待っている二人とも少し会話を交わしました。
「今日はどこのプールに行ったんですか?」
「学校はいつから始まるんですか?」
他愛もない話をしながら、青春のひとコマを垣間見せてもらいました。
修理の最終段階に入り、ついにスマホが復旧しました。電源が入り、操作も問題なくできるようになった瞬間、二人はほっとした表情を浮かべました。

「はんぶんこ」の心
「でも…足りないかもしれない。」

修理費用を確認した二人がそう呟きました。スマホの修理は決して安いものではありません。特に学生さんにとっては、大きな出費です。
「とりあえず復旧はできたので、お預かりして、明日以降のお支払いでも大丈夫ですよ。」
そう伝えましたが、二人の都合が合わず…少し考え込んだ後、彼らは「はんぶんこ」と言いました。
財布からお金を出し合い、修理費用を分け合って支払うその姿に、またしても胸が熱くなりました。
無事にお会計が終わり、最後にとても丁寧なお礼の言葉をもらいました。
「ありがとうございました。本当に助かりました!」
二人を無事に送り出した後、少しウルッときてしまいました。
修理の数だけ、人とのつながりがある

日々、スマホを修理していると感じることがあります。
スマホは単なる精密機器ではなく、それを使う人の思い出や日常が詰まっています。だからこそ、修理する側としては、ただ直すだけではなく、その背景にも寄り添いたい。
今回の学生さんのように、修理を通じて人と触れ合い、関わり合うことで、「この仕事をしていてよかった」と心から思える瞬間があります。
やっぱりちょっとセンチメンタルになりすぎましたかね。
それでも、「スマホの数だけ物語がある」。
そしてその物語に少しでも関われることが、この仕事の醍醐味なのかもしれません。
そんなことを思う、今日の渋谷店スタッフでした。
