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気温変化や使用環境でiPhoneが壊れる?何気ない動作が招く故障。
- 秋葉原店 2022-07-08 2023-01-23 秋葉原店店長 須山よしのり

急激な温度変化、何気ない動作が命取り?

iPhoneやiPadなど殆どの人が精密機器を手に持ち生活をする昨今。
高機能が手のひらに収まるとなれば、持ち歩くのが必然です。
しかし、大多数の人間が繊細な精密機器を持ち歩く、となれば…
どんなに気を遣って作られた製品も、様々な危険に晒されます。
中でも、気をつけなければいけないのは…外気温です。
特に日本には四季があり、夏や冬における端末の故障率は非常に高く
気温が高すぎても、低すぎても、人間と同じように不調のもとに。
リモートワークからの転換期で薄く軽く大画面なiPadを持ち運ぶ方も増え始め、屋外で使用されている方も見かける機会が増えました。
室内と室外の気温の変化が大きくなる冬と夏、屋外での端末使用は様々なトラブルの原因になることも。
例えば夏場は今まで感じたことのないほど端末が熱を持ったり、端末が膨らんできたり…
逆に冬場は起動不良や、自覚のない機能不全に見舞われます。
特に冬場の症状は、ユーザーが見落としている要素が多い

中でも冬場、寒い時期は使用されている方が「なぜかこうなってしまって」と
思い当たるキッカケもなく症状に見舞われることが多い季節です。
私達はゆっくりとお話を伺いながら、経験や知識をもとに紐解いて行くのですが…
その中で必ず聞く要素は以下の通りです。
・購入から何年使用しているか
・使用期間内に該当端末の修理や本体交換を行っているか
また使用法についてもお伺いします。
・お風呂や水回りで使用しているか
・消毒液などで端末を拭いたりするか
・気温や湿度の変化が激しい環境(工場や現場仕事)で使用しているか
・充電しながらの使用は頻繁か
・車での充電、もしくは車内に長時間放置するか
一見すると関係のなさそうな、普段何気なく行う動作についてお伺いするので
たまに「なんでこんな事を聞くんだろう」と怪訝な顔をされてしまうこともあるのですが
実は一つ一つが重要で、かつ原因の足がかりになる要素ばかりです。
例えば、これを読んでいる方もiPhoneやiPadに不具合、不可解な挙動が見られる場合
上の要素に一つでも思い当たる節があるときは、環境や使用法によってiPhoneやiPadがダメージを負っている可能性があります。
そもそもiPhoneの推奨される動作環境って?

どんな電子機器にも、実は「動作環境」という仕様があります。
説明書やスペックノートを読み込めば必ず書いてあるものですが…
恐らく「説明書」という存在すら無くても使えるiPhoneですから殆どの方が気にしたことは無いでしょう。
例えばiPhone12の場合は
動作時環境温度: 0°〜35°C
保管時(非動作時)温度: -20°〜45°C
相対湿度: 5%〜95%(結露しないこと)
動作高度: 3,048mまでテスト済み
引用元 https://www.apple.com/jp/iphone-12/specs/
個人的に高度1万フィートで動作確認をされているのが面白いな、と思ったりもするのですが…
こんな感じで仕様書の下の方にはなりますが、動作環境について必ず記載があります。
一般的な生活様式の中で上記の表にあるような極限環境に身を置かれる方は、まず居ないでしょう。
ただ、よく考えてみて下さい。
上記の推奨環境から外れる、一般的な環境があります。
「真冬の風呂場」や「真夏の車内」です。
内部結露の恐ろしさ

一般的に「結露」といいますと…
「温かい室内と寒い室外の間で生じる水滴」をイメージされるでしょう。
もちろん、これも「結露」で正解です。
しかし、結露という現象は紐解いていくと…
「外部と内部の温度差によって生じる水滴」でもあります。
つまり温かいものと冷たいものが同時に存在する状態で起こるものです。
iPhoneにとって内部結露が脅威である理由は、そこにあります。
iPhoneは使用時の発熱を外部に逃がすために、熱伝導率の高い素材が使用されています。
外装にはガラスやアルミ・ステンレス、より心臓部に近い電子基板周辺では銅など、ですね。
この熱伝導率が高い素材は熱を逃がす天才でもありますが、熱を吸収する天才でもあります。
つまり急速に温度変化を起こす素材ともいえます。
常に都合のいい作用ばかりはしません、常に相対的な反応を起こす素材です。
例えば夏場の外気温35℃前後の室外では、iPhoneもしっかりと温度上昇をします。
また冬場の外気温0℃以下の環境化では、iPhoneもしっかり冷やされます。
外環境の変化に非常に敏感な機械と言えるでしょう。
そのまま使用をしている分には、なんとか推奨環境下なので動かせます。
しかし、iPhoneは人間の移動に伴って様々な環境に曝されるモバイル端末ですよね。
夏場の場合は、クーラーの効いた肌寒い空間にいきなり置かれることもありますし…
冬場は暖房の効いた室内に、いきなり連れて行かれることもあります。
「あー寒いからお風呂に入ろう、暇だしiPhoneも持っていこう、防水だし」
…こうしてiPhoneにとって最悪の環境に置かれることも少なくないでしょう。
気温と湿度の急激な上昇はiPhoneにとって暖かくて気持ち良いどころの騒ぎではありません。
キンキンに冷えたiPhoneは、周辺環境に近付くために熱交換を始めます。
しかし、お風呂場ともなると外部との気温差は軽く40℃を超えます。また湿度は90%以上でしょう。
そんな環境化で急速に熱交換を行ったiPhoneの内部では、結露が発生します。
仮に「水がかからないように」「ジップロックに入れていた」として…
iPhoneとジップロックの間に空気がパンパンに入っていれば多少マシになるでしょう。
しかしそれでは人間がタッチパネルを操作することが出来ません。
(大抵の方はジップロック内部の空気を抜いて、ほぼ真空状態で持ち込むのでしょう)
…それでは、水がかからない環境が出来たとしても、内部の結露は防げません。
耐水、気密性が仇になる。熱や水が逃げない

iPhoneの耐水構造は外部からの侵入をある程度防いでくれます。
が、逆に内部で熱や水分が発生した場合、簡単に外部へ逃げていきません。
なので、お風呂などで高温多湿状態が連日続くと内部の湿気や水分は蓄積していきます。
内部の飽和水蒸気量がどんどん上がっていけば、乾かすことも不可能です。
またiPhoneは電気を通しやすい素材が多用され、使用時には人肌程度の熱を発します。
この電気を通しやすい素材はサビや緑青を、その熱により効率よく発生させ、最悪の場合「腐食」を起こしてしまいます。
こうなると、もはや精密機器というより腐食とガラスの塊と化したiPhoneが通常通り使える見込みはありません。
つまり「iPhoneへの死刑宣告」です。
ユーザーの使い方が悪い・認識が甘いばかりに、高品質で高機能な希少金属の塊が壊れてしまうのです。
最後に

そんなときは、私達のような修理店へ頼って下さい。
しかし間違えないで頂きたいのは
「私達は修理屋であり、魔法使いではない」
というところです。
お客様が困っていることを解決するために努力は惜しみません。
ただ、出来ることには限界や妥協が必要なこともあります。
「修理屋だから、絶対直せると思ったのに」
…こんな心苦しい言葉を頂くことも御座います。
ですが私達は間違ってもお客様に「壊さなければよかったのに」なんて言うことはありません。
過ぎたことを言っても仕方がないから、です。
問題は、これからどうするか。
そして今後、同じことが無いように丁寧に、知識や技術をもって御客様の認識も改めて頂けるよう努力をします。
また、ここまで書いてきたことがより多くの水没や気質の変化で壊れるiPhoneの助けになることを願っています。
